卸売業や商社が業務を見直す際のチェックポイント ~営業編その1~

中小規模の卸売業や商社は、業種にもよりますが、多くの会社で売上の伸び悩みという課題を抱えています。

特に、商品で大きな差別化をしにくい卸売業や商社では、売上の伸び悩みに加えて、利益率の悪化も加わり、余裕を持った利益を計上していくことが難しくなった会社も多いのではないかと思います。

そこで、営業を見直して、新たな得意先の開拓、売上拡大を模索していく際のヒントとして、当社がこれまで取り組んできた営業プロセスの仕組み化のポイントを紹介していきます。

ポイント1 営業を何年も前と同じことをしていないか

業歴が長い会社、古くからの信頼を有する会社、規模がある程度大きな会社によく見られることですが、経営者や営業責任者の方とお話をしていると、「新規営業はなかなか難しいよ」とか「新しい営業をすると、これまでの得意先にかける時間が減るからできない」という声を聞きます。

中には、「この業界は、営業で目立ったことをしたら、まずいよ」みたいな考え方の会社もいらっしゃいます。

特に、以前(10年、20年前)儲かっていた会社に、このような傾向が多いという印象があります。

ここ10年で、卸売業や商社を取り巻く環境は、大きく変わっています。

ご存知の通り、インターネットによって流通が劇的に変化していることに加えて、医薬品や日用雑貨などM&Aによる業界再編が行われたり、大手小売業を中心に卸や問屋の流通経路を通さないいわゆる「中抜き」が進んだりしています。

10年、20年前とは卸売業や商社の経営環境が全く変わっています。

そんな中、「ウチはこのままでもなんとかなる」とか「やり方を変えるほうが危険」とかいう考え方は、かなり大きなリスクがあるのではないでしょうか?

会社を変えていく、営業のやり方を変えていくのは大変な時間と労力が必要になります。

また、これをやったら確実に大丈夫、というようなものもなく、成功するかしないかはやってみないとわかりません。

しかし、大変でも、確実じゃなくても、変化をしていかないと出口は見えてこないです。

まずは、少しずつでも営業の仕組みを変えていくというマインドを持つことが重要なポイントとなります。

ポイント2 営業ターゲットを見直す仕組みがあるか

あなたの会社の得意先は、どんな会社が多いですか?

  • 長く取引を続けている会社
  • 規模の大きな会社
  • スポットで大きな取引を発注してくれる会社

このようなタイプの得意先は、売上高全体の大きな割合を占めることがよくあります。

これまで、あなたの会社に大きな売上をもたらしてくれた上得意先であり、現在も売上の柱となっているものと思われます。

一方で、これらの得意先の取引割合が増えていくと、いろいろと厄介なことも出てくると思います。

例えば、不況になって得意先の生産調整や在庫調整があれば、受注を大きく減らされることもあるでしょうし、大きなスポット取引が多い取引先であれば、受注の有無であなたの会社の売上が大きく変動することになります。

また、上得意先であるがゆえに、多少の無理(中には、相当な無理もあると思いますが)も聞かないといけない場合も多いでしょうし、クレームなどで担当者が疲弊することもあるでしょう。

でも、売上の柱になっているので、経営の不安定のモトになっているにもかかわらず、現状を「変えられない」という課題を抱えている会社が多いのではないかと思います。

このような状況になる要因はいろいろとあると思いますが、ある営業の仕組みが欠けているというのも大きな原因のひとつになっています。

それは「営業ターゲットを定期的に見直す」仕組みを営業業務に組み込んでいないことです。

営業ターゲットの見直しは、「営業」というひとつの業務だけではなく、全社レベルの重要な論点です。

ですが、あまり大きくとらえてしまうと、やらないといけないのはわかっていても何もできなくなってしまいます。

そこで、あえて営業業務の中に営業ターゲットの見直しに関する歯車を仕込んでおくのです。

具体的な仕組みを以下でご紹介します。

①自社の「強み」を知るための情報収集を営業業務に組み込む

まず、営業ターゲットを絞り込むために重要となるのは、自社を知ることです。

「自分の会社のことはよく知ってるよ」と思うかもしれないですが、意外と自社のことを理解している経営者のことは少ないです。

例えば、これまでお会いした経営者の方で、

「初めて会った方が目の前にいるとして、自社の特徴を30秒で説明してみてください」

と質問させて頂いた際に、きっちり説明できる社長はかなり少数派でした。

また、「御社の強みって何ですか?」という質問をしても、「幅広い商品ラインナップです」とか「迅速な対応です」というような回答をされる経営者が多くいらっしゃいます。

これも申し訳ないのですが、多くの場合、どこの卸売業、商社でも言っている「強み」であり、差別化された本当の「強み」ではありません。

というからもわかるように、意外と経営者は自社のことを知りません。

では、自社の「強み」を一番知っているのは、誰だと思いますか?

実は、普段、営業で接している得意先が一番、あなたの会社の強みを知っています。

なので、営業担当者に営業時に自社の「強み」を収集してもらうことが一番です。

具体的には、次のような業務を営業プロセスに仕組みとして組み込むことでいろいろな情報が入ってくると思います。

定期的に得意先に「顧客満足度調査」などの形でアンケートをとってみる

「顧客の声の報告書」というような報告フォームを作り、営業担当者が得意先から「ありがとう」とか「助かった」と言われたことをすべてに記載して、報告する。

「顧客問い合わせノート」というようなノートを用意して、得意先からのちょっとした問い合わせ(「こんなことできない?」とか「こんな場合どうする?」みたいなもので雑談レベルのものを含む)をすべて書き込んでいく。

ここで重要なのは、上記のような業務を、できたらやるではなく、営業担当者のマストの業務にする(ルール化する)ということです。

② ①で収集した情報を定期的に分析・リストアップする業務を組み込む

上記の結果、あなたの会社の「強み」を知るためのいろいろな情報が集まってくるようになっていると思います。

ここで、集まった情報を定期的に分析し、あなたの会社に対する得意先の評価や期待を見極めていく業務を仕組み化していきます。

例えば、

四半期に1回、①で集まった情報を取りまとめる。

自社がどのようなポイントで評価されているか、分析する。

得意先が自社に何を期待しているか、分析する。

自社を評価してくれている会社の傾向を把握する。(注1)

(注1)自社のことを評価してくれている会社は、必ずしも現状の取引金額が小さくてもOKです。

これらを検討した結果、自社の強みが浮かび上がってくるとともに、強みを活かせる得意先が見えてくると思います。

その中で、これまでの上得意先ではないが、自社を評価してくれている会社や今後の伸びしろがある会社をリストアップしていきます。

③ リストアップした会社を重点営業先として、営業活動にフィードバックする

②で分析しリストアップした会社は、将来的に上得意先になる可能性を秘めている会社です。

これらについては、重点営業先として営業活動を行っていきます。

(重点営業先については、「卸売業や商社が業務を見直す際のチェックポイント ~営業編その2~」をご覧ください)

上記①~③を思いついた時にやるのではなく、きっちりと営業業務の中に仕組みとして組み込むことで、継続的に営業ターゲットの見直しがチームとして実施できるようになります。

これを続けていくことで、上得意先への依存体質を脱却できるようになるのです。