卸売業や商社が業務を見直す際のチェックポイント ~在庫管理その2~

前回に引き続き、卸売業や商社における在庫管理について、ポイントを説明します。

前回は、在庫管理の前提となる重要性によるランク分けやデータ管理の話をしましたが、今回はこのデータを用いて、経営の不安定要素を取り除くための在庫管理について、書いてみようと思います。

ポイント1 調達リードタイムを短くするための仕組み

在庫が膨らんでいく大きな要因のひとつが、調達リードタイムに不安があることがあげられます。

調達リードタイムとは、仕入先に対して発注してから納品されるまでの期間ですが、ここに不安があると、どうしても余裕を持った発注をしないといけなくなり、在庫が膨らんでしまう傾向があります。

なぜ、調達リードタイムが不安定になるのか?について考えてみましょう。

  • 仕入先の工程がパンパンになって回っていない
  • そもそもの納期が厳しかった
  • 仕入先の納期の意識が低い

などが要因として思いつくところです。

このように、調達リードタイムが不安定になるのは、基本的に仕入先の要因です。

しかし、だからといって発注元であるあなたの会社に打つ手はないかといえば、そうではありません。

調達リードタイムを遵守するための仕組みを作っていくことで、想定外の納期遅れを防ぐことができるのです。

では、具体的にどのような仕組みがあるのかを見ていきましょう。

仕組み1 仕入先に対して、具体的な生産指示や留意点などを書面で伝える

仕入先からの納品が遅れるよくある理由として、不良品や仕様違いによる作り直しや調達やり直しということがあります。

数量ミスというのもあったりします。

これらは、基本的には仕入先のミスであることが多いと思うのですが、仕入先のミスだからといって放っておくと、何の解決にもなりません。

なぜ、このようなミスが起こるか?というと、あなたの会社の要望が十分に伝わっていない可能性が考えられます。

そこで、あなたの会社にできることとして、具体的な生産指示や留意点などを書面で伝えることがあげられます。

仕入先のミスを減らすために、具体的な指示や数量、留意点などを注文書や作業指示書という形で細かく明確に伝えることをルール化し、発注時にきっちりと運用することが有効となります。

仕組み2 納期前に仕入先に作業の進捗を確認する

仕入先の繁忙感は、あなたの会社にはあまり見えないのが通常だと思います。

もしかしたら、他の作業などで、あなたの発注した商品の調達や作業が後回しになっているかもしれません。

このような要因で納期遅れが発生するのは、仕入先の責任です。

しかし、あなたのお客様からクレームを受けるのはあなたの会社ですので、できる限り防いでいきたいと思います。

そこで、仕入先に優先順位を上げる意識付けをするために、仕入先に納期の数日前に商品の調達状況、作業状況の確認をすることが有効となるケースがあります。

口うるさい取引先の仕事を早めに終わらせたいと思うのは、よく理解できるところです。

仕組み3 仕入先とのコミュニケーション

ポイント2にもつながることですが、仕入先の担当者と日ごろからコミュニケーションを図っておくこともポイントの一つとなります。

コミュニケーションを密にとることで、仕入先との信頼関係が構築され、いざというときにあなたの会社の仕事を優先してくれるようになったりします。

普段から仕入先との話は値下げの話だけで、無下に扱っていると、柔軟に対応してくれなくなってしまいます。

こちらも気を付けたいポイントですね。

仕入先の担当者も同じ人間だということをお忘れなく。

1~3のようなことを地道に行っていくことが、調達リードタイムを安定させるポイントとなります。

ポイント2 長期滞留在庫にフォーカスを充てる

こちらも在庫管理に意識が十分に向いていない会社によくあることですが、現時点の長期滞留在庫が具体的に把握できていないということがあります。

この長期滞留在庫とは、次のような在庫をいい、当初の販売価格では販売できなかったり、正規の販売ルートに乗せることができなかったりする在庫をいいます。

  • 長期間にわたり販売できていない在庫
  • 受注見込み誤りや仕入ミス等によって過剰に仕入れた在庫
  • ロット端数の在庫
  • 廃版、カタログ落ちの在庫
  • 傷や変色などの不良在庫

長期滞留在庫について、社長がざっくりとは把握されているけれども、具体的なアイテムや個数、金額を把握されていないケースがよくあります。

例えば、以下のやりとりですが、

当社「社長、長期滞留在庫はありますか?」

社長「倉庫に少しあるね。」

当社「少しというのは具体的に把握されていますか?」

社長「把握してるよ。倉庫のあのあたりに固めておいてあるあの箱やね。」

当社「長期滞留在庫のリストはありますか?」

社長「いや、作ってない」

当社「長期滞留在庫の数と金額はわかりますか?」

社長「いや、具体的にはわからん」

という感じです。

長期滞留在庫は正常な在庫と分離して、きっちりと把握すべきです。

なぜかといいますと、長期滞留在庫を抱えることによって次のような問題点があるからです。

  • 長期滞留在庫は正常品としては販売が困難なものであるため、分けて管理をしておかないと、受注時に思わぬ欠品や在庫引当のミスが起こってしまいます。
  • 通常の利益の乗せて販売できないからといって、そのままにしておくと、当初の仕入価格に相当するおカネがずっと寝てしまうことになります。また、運転資金の借入をしていれば、その金利負担も上乗せされます。
  • 長期滞留在庫が倉庫内でスペースをとっていることで、保管コストがかさんでしまいます。(倉庫の賃借料や長期滞留在庫に係る実地棚卸、倉庫内の移動などによって発生する見えないコストなど)

したがって、長期滞留在庫はできる限り早く払い出す必要がありますが、長期滞留在庫の管理ができていないと、数字面でのインパクトが見えにくくなるとともに、払い出しに向けた意識が低くなってしまいます。

そこで、長期滞留在庫の削減に向けた取り組みとして、以下を行っていく必要があります。

1.長期滞留在庫のリストアップと区分

まずは、長期滞留在庫をリストアップし、次のような区分をしていきます。

  • 販売可能性が全くないモノ
  • 値下げをすれば販売できるモノ
  • 見本品やサンプル品など他の用途に転用できるモノ

2.区分に応じた長期滞留在庫の払い出し

こうしたうえで、次の取り組みを進めていく必要があります。

  • 販売可能性が全くないモノについては、早期に処分する。
  • 値下げをすれば販売できるモノについては、価格を見直したうえで、通常の販売ルート以外のルートに乗せた処分販売を行う。 

この場合、原価割れをしてでも販売したほうがいいケースもあります。

なぜなら、原価割れを避けて販売できなくなってしまえば、将来的に「販売可能性が全くないモノ」になる可能性が高く、そうなれば1円のキャッシュも生み出さないからです。

長期滞留在庫は、そのままにしておくと、どんどん膨らんでいき、気が付いたときにはキャッシュフローを悪化させる病巣になってしまいます。

ですので、通常の在庫管理プロセスの中で長期滞留在庫を把握しながら、早期に払い出すための取り組みを行っていくことによって、長期滞留在庫が膨らんでいかない仕組みを作っていくことが重要となります。