• ホーム
  • ブログ
  • 基幹システム(基幹業務システム)とは?選び方や構築方法を解説

基幹システム(基幹業務システム)とは?選び方や構築方法を解説

基幹システム_表紙 (1)

企業が成長し、業務が複雑になる中で、業務の効率化や情報の一元管理はますます重要になっています。そんな中で注目を集めているのが「基幹システム」、別名「基幹業務システム(ERP)」です。このシステムを導入することで、企業は業務プロセスを最適化し、競争力を高めることができます。しかし、基幹システムの導入は大きなプロジェクトであり、選定や構築には多くの考慮が必要です。本記事では、基幹システムの基本から選び方、導入ステップまでを詳しく解説し、導入を検討している方々に役立つ情報を提供します。

基幹システム(ERP)とは

基幹システム、英語ではEnterprise Resource Planning(ERP)と呼ばれるこのシステムは、企業の中心となる業務プロセスを統合的に管理・運用するためのものです。財務、人事、販売、購買、在庫管理など、様々な部門の情報を一つのプラットフォームで管理することで、情報の共有や業務の効率化を実現します。これにより、企業全体の業務プロセスがスムーズに連携し、意思決定の迅速化やコスト削減ができるようになります。

基幹システムの機能

基幹システムには様々な機能があります。主なものを以下に挙げます。

  • 財務会計システム:企業の財務状況を管理し、予算策定や資金繰りをサポートします。例えば、月次決算や資金計画の作成を効率化します。
  • 人事管理システム:従業員の情報管理や勤怠管理、給与計算などを行います。採用から退職までのプロセスを一元管理できます。
  • 販売管理システム:顧客情報の管理や販売プロセスの最適化を図ります。受注から出荷、請求までをスムーズに行います。
  • 購買管理システム:仕入れ先との取引管理や在庫の最適化をサポートします。発注から支払いまでのプロセスを効率化します。
  • 在庫管理システム:商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、在庫の適正化を図ります。過剰在庫や在庫不足を防ぎます。
  • 生産管理システム:製造業における生産計画や品質管理を支援します。生産スケジュールの調整や品質チェックを効率化します。

これらのシステムは、単独で導入されることもありますが、統合されたプラットフォーム上で連携させることで、さらに高い効果を発揮します。

▽在庫管理システムについては以下の記事でも解説しています。

基幹システムと業務システムの違い

業務システムは特定の業務を効率化するためのシステムで、例えば営業支援システムや顧客管理システムなどが該当します。一方、基幹システムは企業全体の主要な業務プロセスを統合的に管理するもので、複数の業務システムを包含します。

基幹システムと業務システムの違いとして、システムが停止した場合の企業活動への影響度の差が挙げられます。基幹システムは、障害が発生し機能停止した場合にシステムに依存する企業活動も止まってしまいますが、業務システムは企業活動全体までとはいかず、そのシステムがカバーする業務に影響が出ます。

基幹システムを導入するメリット

基幹システムの導入メリットについて、主なものを以下に挙げます。

  • 業務の効率化

基幹システムは、複数の業務プロセスを統合的に管理することで、データの重複入力や手作業によるミスを減らします。これにより、業務の効率化が図れ、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。例えば、手動でのデータ入力が減ることで、作業時間が短縮されます。

  • データの一元管理

基幹システムにより、企業全体のデータが一箇所で管理されます。これにより、各部門間での情報共有がスムーズになり、早めに意思決定ができるようになります。データの一貫性も保たれ、信頼の高い情報に基づいた経営が実現します。例えば、販売データと在庫データが連携することで、リアルタイムの在庫状況を把握できます。

  • コスト削減

業務の効率化とデータの一元管理により、運用コストを削減できます。また、システムの標準化により、IT関連のコストも抑えられます。長期的には、システム導入による投資がコスト削減と業務改善につながり、企業の財務状況も改善されます。例えば、紙ベースの管理からデジタル管理への移行で印刷コストが削減されます。

  • 柔軟な対応力

基幹システムは、企業の成長や変化に合わせて柔軟に対応できます。新しいビジネスプロセスの導入や組織再編などにも早めに対応でき、企業の競争力を維持・向上させることができます。例えば、新しい販売チャネルの追加に対してシステムを迅速に調整できます。

  • リスク管理の強化

基幹システムは、企業のリスク管理にも大きな役割を果たします。データの一元管理により、リスクの早めの把握や対応が可能となり、法令遵守(コンプライアンス)やセキュリティ面でも強化が図れます。例えば、不正アクセスの監視や内部統制の強化が実現できます。

基幹システムを導入するデメリット

一方で、基幹システムの導入にはデメリットも存在します。以下に主なものを挙げます。

  • 初期導入コストの高さ

基幹システムの導入には、多額の初期投資が必要です。ソフトウェアの購入費用やカスタマイズ費用、導入支援サービスの費用などがかかります。また、導入後の運用にも一定のコストが発生します。例えば、システムライセンス料や専門スタッフの採用費用が必要です。

  • 導入期間の長さ

基幹システムの導入は、計画から実装までに長い期間を要します。特に、大規模なシステムの場合、導入完了までに数ヶ月から数年かかることもあります。この間、業務に一時的な混乱が生じる可能性もあります。例えば、新システムへの移行期間中に業務が停滞するリスクがあります。

  • システムの複雑さ

基幹システムは多機能であり、そのため操作や管理が複雑になることがあります。システムの理解や操作に時間がかかり、従業員への教育やトレーニングが必要となります。また、システムの変更やアップデートにも対応する必要があります。例えば、新しい機能の習得に時間が必要です。

  • カスタマイズの難しさ

基幹システムは、標準機能では企業の特定のニーズに完全には対応できない場合があります。そのため、カスタマイズが必要となることが多く、この作業には専門知識が求められ、コストや時間がかかることがあります。例えば、自社独自の業務フローに合わせたシステム調整が必要です。

  • 依存リスク

基幹システムに依存することで、システムの障害やトラブルが発生した際に業務全体に大きな影響を与えるリスクがあります。また、システムベンダーへの依存度が高くなるため、ベンダー選定や契約内容も慎重に検討する必要があります。例えば、ベンダーのサービス停止時に業務が止まるリスクがあります。

基幹システムに関わる業務と主な機能

基幹システムは、企業の主要な業務を支えるためにさまざまな機能を備えています。主な業務と機能について詳しく見ていきましょう。

  • 財務管理

財務管理機能は、企業の資金の流れを管理し、財務状況を把握するためのものです。具体的には、会計処理、予算管理、資金繰り管理、報告書作成などが含まれます。これにより、企業の財務状況をリアルタイムで把握し、適切な財務戦略を立てることができます。例えば、月次レポートの自動生成や予算のリアルタイム監視が可能です。

  • 人事管理

人事管理機能は、従業員の情報を一箇所で管理し、人材の最適な配置や育成を支援します。具体的には、採用管理、勤怠管理、給与計算、評価管理、研修管理などが含まれます。効率的な人事管理は、従業員のモチベーション向上や離職率の低減につながります。例えば、勤怠データの自動集計や給与計算の自動化が実現します。

  • 販売管理

販売管理機能は、顧客との関係を管理し、販売プロセスを最適化するためのものです。具体的には、受注管理、在庫管理、出荷管理、請求書発行、売上分析などが含まれます。これにより、顧客満足度の向上や売上の増加を実現します。例えば、受注から出荷までのプロセスを自動化し、ミスを減らすことができます。

  • 購買管理

購買管理機能は、仕入れ先との取引を管理し、購買プロセスを最適化します。具体的には、仕入れ先管理、発注管理、納品管理、支払管理、購買分析などが含まれます。効率的な購買管理により、コスト削減や納期の短縮が可能となります。例えば、発注履歴の管理や仕入れコストの分析ができます。

  • 在庫管理

在庫管理機能は、商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、在庫の適正化を図るためのものです。具体的には、在庫の入出庫管理、在庫回転率の分析、需要予測、棚卸管理などが含まれます。これにより、在庫過多や在庫不足を防ぎ、リソースの有効活用が可能となります。例えば、需要予測に基づいて適正な在庫量を維持できます。

  • 生産管理

生産管理機能は、製造業における生産プロセスを管理し、生産効率を向上させるためのものです。具体的には、生産計画の作成、生産実績の管理、品質管理、設備管理、原価管理などが含まれます。これにより、生産の最適化や品質の向上を実現します。例えば、生産ラインの稼働状況をリアルタイムで監視し、効率的な生産をサポートします。

基幹システムを選ぶポイント

基幹システムを選ぶ際には、企業のニーズや業務プロセスに合ったシステムを選定することが重要です。以下に、選定の際に考慮すべきポイントを挙げます。

  • 企業のニーズと目標の明確化

まず、企業が基幹システムを導入する目的や目標を明確にすることが不可欠です。業務のどの部分を改善したいのか、どのような成果を期待しているのかを具体的に定めることで、適切なシステム選定が可能となります。例えば、業務効率化とコスト削減を目指すのか、データの一元管理を重視するのかを明確にします。

  • 機能の充実度

基幹システムが提供する機能が、企業の業務プロセスに合っているかを確認する必要があります。必要な機能が充実しているか、また将来的な業務拡大にも対応できる柔軟性があるかを評価しましょう。例えば、現在の業務に必要な機能だけでなく、将来的に追加する予定がある機能についても検討します。

  • カスタマイズ性と柔軟性

企業ごとに異なる業務プロセスに対応するために、システムのカスタマイズ性や柔軟性も重要です。標準機能だけでなく、必要に応じてカスタマイズができるか、またはモジュールを追加できる構造になっているかを確認しましょう。例えば、自社独自の業務フローに合わせてシステムを調整できるかをチェックします。

  • クラウド型とオンプレミス型

基幹システムには「クラウド型」と「オンプレミス型」に大別されます。

それぞれの特徴を以下にまとめます。

利用形態特徴メリットデメリット
クラウド型インターネットを通じて提供されるサーバー、ストレージ、アプリケーションなどを利用する形態初期コストの低減や迅速な導入、運用の簡単さデータのセキュリティやプライバシーに対する懸念
オンプレミス型自社の設備内にサーバーやネットワーク機器を設置し、ソフトウェアやデータを管理する形態システムの完全なコントロールや高いカスタマイズ性初期投資や運用コストが高くなる傾向がある

クラウド型とオンプレミス型についてはこちらの記事でもご紹介しています。

  • ベンダーの信頼性とサポート体制

システムを提供するベンダーの信頼性や実績、サポート体制も選定の重要なポイントです。過去の導入実績や顧客の評価、導入後のサポート体制が整っているかを確認し、安心してシステムを運用できるパートナーを選びましょう。例えば、導入後のトラブル対応が迅速に行えるかどうかを確認します。

  • UI(ユーザーインターフェース)と使いやすさ

システムの使いやすさも重要な要素です。ユーザーインターフェースが直感的で操作しやすいか、トレーニングなしでも基本的な操作ができるかを確認することで、導入後のスムーズな運用が期待できます。例えば、シンプルなデザインや操作ガイドが充実しているかをチェックします。

  • セキュリティとコンプライアンス

システムが提供するセキュリティ機能や法令遵守への対応も重要です。データの暗号化やアクセス制御、監査機能などが備わっているか、また業界の規制や標準に準拠しているかを確認しましょう。例えば、顧客データの保護や内部統制の強化ができるかを確認します。

基幹システム導入ステップ

基幹システムの導入は、一連のステップを経て慎重に進める必要があります。

以下に主な導入ステップを解説します。

1. 要件定義

まず、システム導入の目的や必要な機能、業務プロセスを明確にします。関係者からのヒアリングや現状分析を行い、具体的な要件を定義します。これにより、導入後のシステムが企業のニーズに合うことを保証します。例えば、現行システムの課題点を洗い出し、改善したいポイントを明確にします。

2. システム選定

要件定義に基づき、複数のシステム候補を比較・評価します。機能の充実度、カスタマイズ性、導入コスト、ベンダーの信頼性などを基準に、最適なシステムを選定します。デモンストレーションを実施し、実際の操作感を確認することも有効です。例えば、数社からデモを受けて比較検討します。

システムの比較ポイントは以下を参考にしてください。

・業務内容への理解とシステムとの整合性

・導入によって見込まれる成果

・機能とUI(ユーザーインターフェース)

・初期費用・ランニングコスト

・導入スケジュール

・サポート体制

3. プロジェクト計画策定

システム導入のプロジェクト計画を詳細に策定します。導入スケジュール、作業分担、予算配分、リソースの確保などを具体的に計画し、プロジェクトの進行を管理します。リスク管理や問題発生時の対応策もあらかじめ考慮します。例えば、プロジェクトマネージャーを配置し、定期的な進捗確認を行います。

4. システム設計・カスタマイズ

選定したシステムに基づき、具体的な設計を行います。必要に応じてカスタマイズを実施し、企業の業務プロセスに合ったシステムを構築します。設計段階では、ユーザーのニーズや業務フローを反映させることが重要です。例えば、特定のレポート機能をカスタマイズして追加します。

5. データ移行

既存のデータを新しいシステムに移行します。データのクレンジングや変換を行い、正確かつ完全なデータを移行することが求められます。このプロセスはシステムの信頼性に直結するため、慎重に実施します。例えば、Excelデータを新システムにインポートする前に、重複データを整理します。

6. システム導入・テスト

システムを実際に導入し、動作確認を行います。機能テストやユーザビリティテストを通じて、システムの問題点を洗い出し、修正します。導入前に十分なテストを行うことで、本番運用時のトラブルを防ぐことができます。例えば、異常終了しないか、入力データが正しく処理されるかを確認します。

7. ユーザートレーニング

システムの効果を最大限に引き出すために、ユーザーへのトレーニングを実施します。システムの操作方法や業務プロセスの変更点を丁寧に説明し、ユーザーがスムーズにシステムを活用できるよう支援します。例えば、操作マニュアルの配布やハンズオンセッションを行います。

8. 運用開始・サポート

システムの運用を開始し、日常業務に統合します。導入後も定期的なメンテナンスやサポートを行い、システムの安定稼働を維持します。ユーザーからのフィードバックを収集し、必要に応じて改善を図ります。例えば、定期的なシステムチェックやユーザーからの問い合わせ対応を行います。

9. 評価と改善

システム導入後は、定期的に評価を行い、効果を測定します。目標達成度や業務効率の向上、コスト削減などを評価し、必要に応じてシステムの改善を行います。継続的な改善活動を通じて、システムの効果を持続的に高めます。例えば、半年ごとに業務成果をレビューし、改善点を見つけます。

マネーフォワードグループのナレッジラボが提供する業務コンサルティングは、複数プロダクトの導入など複雑なプロジェクトを業務プロセスの設計から運用まで横断的にご支援させていただくことで、バックオフィスの抜本的な改革を実現します。

▼(マネーフォワードグループ)ナレッジラボのコンサルティングサービスの詳細はこちら

ver2 2 1 1

基幹システムに関するよくある質問

基幹システムの導入に際して、よく寄せられる質問とその回答を以下にまとめました。

基幹システムの導入にかかる期間はどれくらいですか?

導入期間は企業の規模や業務の複雑さ、システムのカスタマイズ度合いによりますが、一般的には数ヶ月から数年にわたることが多いです。事前の計画とスケジュール管理が導入成功の鍵となります。

基幹システムの導入費用はどのくらいですか?

導入費用も企業の規模や選定するシステムの種類によりますが、一般的には数百万円から数千万円、場合によってはそれ以上となることもあります。初期費用だけでなく、運用コストや保守費用も考慮する必要があります。

基幹システムの導入でどのような効果が期待できますか?

業務の効率化、データの一元管理、コスト削減、意思決定の迅速化などが期待できます。また、業務プロセスの標準化や組織全体の透明性向上にもつながります。これにより、企業業績の強化や市場対応力の向上が見込まれます。

導入後のサポートやメンテナンスはどうなりますか?

システムベンダーから提供されるサポート体制は契約内容によりますが、多くの場合、導入後も定期的なメンテナンスやアップデート、トラブル対応のサポートが提供されます。長期的に安定した運用を維持するためには、適切なサポート体制を確保することが重要です。

基幹システムの導入に失敗しないためのポイントは何ですか?

失敗を防ぐためには、以下のポイントに注意することが重要です。

  • 明確な目標設定:導入の目的や達成したい成果を明確にする。
  • 十分な要件定義:企業の業務プロセスやニーズを詳細に把握し、要件を明確にする。
  • 信頼できるベンダー選定:実績やサポート体制が信頼できるベンダーを選ぶ。
  • 計画的なプロジェクト管理:スケジュールや予算を適切に管理し、リスクを予測・対策する。
  • ユーザーの巻き込み:ユーザーの意見を反映し、導入後の受け入れを促進する。
  • 継続的な評価と改善:導入後も定期的に効果を評価し、必要に応じて改善を行う。

まとめ

基幹システムの導入は、企業の成長と競争力強化において重要なステップです。本記事が、基幹システムの理解と導入を検討する上での参考となり、成功への一助となれば幸いです。システム選定や導入プロセスにおいては、専門家の意見を取り入れつつ、自社のニーズに最適な選択をすることが重要です。ぜひ、この記事を活用して、貴社のビジネスをさらに高みへ導いてください。

この記事の監修者

この記事の監修者

藤井 翔太 (1)

藤井 翔太

株式会社ナレッジラボ 業務デザイン コンサルティングチーム/チームマネジャー/税理士
大学院卒業後、国内大手税理士法人にて国内企業および外資系企業に対する税務コンサルティング業務に従事。 その後、個人会計事務所における様々な企業に対する経営支援業務経験を経て、株式会社ナレッジラボに入社。 現在は、税理士としての知見を活用しながらバックオフィスの効率化や最適な業務フローのコンサルティング提案を担当し、上場企業のグループ会社などを中心に150社以上の導入支援に関与している。
関連資料
WP29_バックオフィスDXの教科書

ビジネスが加速する!バックオフィスDXの教科書