家族から不動産を借りている個人事業主が外せない5つの経理ポイント

個人で事業を始める場合、家族や親族から店舗や事務所、倉庫、駐車場など事業に利用する建物や土地を借りることがよくあります。

不動産会社を通して借りる場合は、明確な契約のもとで、賃料などもきちんと決まっていますが、家族や親族から借りる場合は、どうしたらよいかよくわからないことも多いと思います。

今回は、このように家族や親族から事業で使う土地や建物を借りる場合のポイントを解説します。

なぜ、家族に家賃を払わなければならないのか?

個人事業主は、家族が所有している建物や土地を借りる場合がありますが、父親名義や配偶者名義の不動産を借りる場合には注意すべき点があります。

税務署は、家族間の取引は、恣意的な調整が可能であるため、税金の支払いを意図的に回避していないかどうかという観点で、経理処理や契約をチェックしてきます。

何も考えずに、家族や親族が持っている土地や建物を使用していると、税金を取られるケースがあるのです。

したがって、家族や親族から建物や土地を借りる場合も、契約関係や賃料の支払いの要否を整理しておかないと、思ってもいない税金がかかってしまうこともありますので、以下で解説するポイントを押さえておきましょう。

なお、前提として借主・貸主ともに個人であることを想定しています。また、わかりやすく解説するために、税法上の用語を改変して使用しています。

ポイント① 最初に不動産の所有者を確認しておこう

最初に、土地や建物が誰の名義になっているか、念のためチェックしておきましょう。

所有者を確認するためには、登記簿謄本を取得し確認することが確実です。

税務署も所有者を確認するために登記簿謄本を取得します。

登記簿謄本はオンラインで取得することもできますが、事前に手続きが必要なため、最寄りの法務局に出向き取得した方がいいと思われます。

事前に該当不動産の地番や家屋番号をメモしておきましょう。これらは、住所とは異なります。住所しかわからない場合は、住所と地番の対応表(ブルーマップ)が法務局に置いてあり、これで確認可能です。

最寄りの法務局に行って、「登記事項証明書」の交付請求書を記載し、窓口に提出しましょう。

最寄りの法務局はこちらで調べることができます。

法務局>管轄のご案内

土日・祝日は法務局が開いていないため、登記簿謄本の取得はできないため、注意が必要です。費用は1筆につき、600円です。

土地と建物それぞれ別々にかかりますので、少し多めに現金を持参しましょう。

費用は現金で直接支払うわけではなく、法務局の中にある印紙販売所で印紙を購入し、登記簿謄本の交付申請書に貼付します。法務局に行く前に、事前に印紙を購入しておく必要はありません。

なお、忙しくて法務局に行くことが難しければ、司法書士に依頼すれば、別途報酬はかかりますが、代理取得してもらえます。

ポイント② 借主と貸主が生計一かどうか

会計処理を決定する上で、借主と貸主がどのような関係かを最初に確認しておく必要があります。

具体的には、貸主と借主が「生計一」かどうかを確認します。

この「生計一」というのは、税務上の専門用語ですが、これはどういう意味でしょうか?

所得税の通達に「生計一」の意義について、次のように記載があります。

所得税法基本通達2-47

(生計を一にするの意義)

2-47 法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。

(1)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。

イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合

ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合

(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする

例えば、次のように整理するといいでしょう。

  • 同一の家屋で生活・・・生計一
  • 同一の家屋で生活しているが、明らかに別々の家計でやりくりしている・・・生計別
  • 単身赴任で休みの日に帰省したり、生活費の送金をしている・・・生計一
  • 大学生で下宿しており、休みの日に帰省したり、生活費や学費の送金をしている・・・生計一
  • 介護が必要な親に対し、生活費や介護費用の送金をしている・・・生計一

イメージとして、「生活のための財布が同じであれば生計一」と考えていいと思われます。

なお、上記通達の送金する金額について明確な基準はありません。

あまりに少額の送金の場合には、生計一であると認められない可能性もあります。

ポイント③ 借主の会計処理

次のポイントは、家族や親族から事業で使う建物や土地を借りている側の会計処理です。

こちらは、生計一かどうかで会計処理が変わってきますので、それぞれ解説します。

生計一の家族に家賃を支払う場合

生計一の家族に家賃を支払う場合には、注意が必要です。

税法の用語でいう「生計を一にする配偶者その他の親族」に支払う家賃は必要経費になりません

これは、生計一の親族間で家賃の授受を行っても、同じ財布の中でお金を移動しているだけと考えられるためです。

よくあるケースとして、配偶者や親が所有している不動産を借りて家賃を支払うケースが挙げられます。

ただし、この場合、配偶者や親が所有している不動産に係る経費は事業主の必要経費に入れることができます。

例えば、固定資産税、火災保険料、保険料、減価償却費が挙げられます。

生計別の家族に家賃を支払う場合

生計別の家族に家賃を支払う場合には、上記のような制限はありません

建物や土地を借りる側が負担した家賃をそのまま必要経費として会計処理します。

ポイント④ 貸主の会計処理

借主と同じく、貸主の会計処理も注意が必要です。

これも借主の会計処理と同様、生計一かそうでないかで取扱いが変わりますので、こちらもそれぞれ解説していきます。

生計一の家族から家賃を受け取る場合

この場合、受け取る家賃は、貸主の収入にはなりません。

払った側で経費にならないため、受けとった側でも収入にしないという取扱いになります。

生計別の家族から家賃を受け取る場合

この場合、受け取る家賃は、貸主の「不動産所得」の収入に計上する必要があります。

不動産所得の必要経費の金額にもよりますが、基本的には確定申告が必要になります。

ただし、給与所得がある方で、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であれば、確定申告は不要になります。

ここでいう所得金額とは、「収入金額-必要経費」で、不動産を貸すことによる利益(儲け)の金額になります。

例えば、サラリーマンで、給料以外の収入が不動産の貸付のみの場合、不動産の貸付による利益が20万円以下であれば、確定申告は不要になります。

ポイント⑤ 賃貸借契約書を作る

家族に家賃を支払う場合には、賃貸借契約書を作成しておくことが重要です。

税務署は親族間のやりとりがある場合、恣意的な条件で行っていないか、疑ってくる可能性があります。

また、税務調査で家族への家賃支払いについて指摘された場合、最初に賃貸借契約書の提出を求められます。

一般的なひな型でいいので、賃貸借契約書をしっかり準備しておきましょう。

この場合のポイントは次です。

契約書の支払い条件は必ず守る

契約書には、必ず支払条件の条項があります。

例えば、「当月分の家賃を前月末日までに支払う」といったものです。

親族間であれば、いわゆる「ある時払い」になりがちですが、契約書通りの条件で継続的に支払うようにしましょう。

印紙を忘れずに

印紙は忘れやすいポイントです。印紙は、建物と土地で取り扱いが違ってきます。

建物を借りる場合の賃貸借契約書には印紙は不要です。

ただし、土地を借りる場合の賃貸借契約書の場合、印紙税額の一覧表の第1号の2文書「土地の賃借権の設定に関する契約書」に該当し、印紙がかかります。

印紙税額は次になります。

印紙を貼付した後は、消印を押す必要があります。忘れないようにしましょう。

MFクラウド確定申告設定のコツ

MFクラウド確定申告で家族へ家賃を支払う場合は、補助科目の設定を工夫すると、あとで管理しやすいと思われます。

補助科目に物件名称や貸主の名称を入力しておけば、支払い漏れもチェックしやすく、相手方で確定申告をするに際し、金額の確認もしやすい形になります。

例えば次のような形です。

まとめ

このように家族へ家賃を払う場合は、チェックすべきポイントがいくつかあります。

生計一かどうかを事前に判断し、処理を決めることが重要です。

誤った処理のままにすると、修正も大変になり、税務上のリスクも負う形になります。家族へ家賃を支払う場合には、第三者との取引以上に、慎重に取引を行うようにしましょう。